『認知症』
日本は長寿大国と呼ばれ、年々寿命が延びています。2016年にWHO(世界保健機関)が発表したデータによると、平均寿命の男女平均が83.7歳で世界1位に輝きました。
日本人が長生きできる理由はいくつかありますが、遺伝子的に環境適応能力の高い黄色人種であることや、健康的な生活習慣、充実した医療環境などが長寿につながっているようです。
長生きできることは素晴らしいことですが、その一方で様々な問題も出てきています。そのひとつが、認知症発症者の増加です。 厚生労働省によると、団塊の世代が75歳を迎える2025年には、認知症患者が約700万人となり、高齢者の5人に1人を占めるとされています。 認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」を加えると、その割合はさらに大きくなります。
高齢になればなるほど認知症を発症するリスクが高まるため、特別な病気ではなく誰にでも起こりうる身近な病気と考えるべきでしょう。
認知症の治療は、薬物療法とリハビリテーションなどが主体となります。 認知症を根本から治す薬は、残念ながらまだ開発されていません。 しかしながら、薬を飲むことで中核症状(記憶障害や見当識障害など)の進行を遅らせたり、 周辺症状(不眠、興奮、徘徊など)を軽減・改善したりすることができます。
中核症状に対して使われる抗認知症薬は4種類あります。 認知症になると不足する神経伝達物質(アセチルコリン)の働きを助ける、「ドネペジル塩酸塩」・「ガランタミン臭化水素酸塩」・「リバスチグミン」。 グルタミン酸濃度の上昇を抑え、神経細胞を保護する、「メマンチン塩酸塩」。 「リバスチグミン」は唯一の貼り薬であるため、薬を飲むことが難しい患者様でも使いやすい薬です。 「メマンチン塩酸塩」は他の3剤と作用が異なるため、併用することが可能です。
周辺症状に対しては、抗精神病薬、気分安定薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、睡眠薬など、症状に応じて様々な薬を使います。
高齢者の場合、副作用が出現しやすいため、医師・薬剤師の指導のもとに正しく服用することが大切です。
今使われている抗認知症薬とは別に、全く異なる作用を持つ薬の開発が進められています。
近い将来に、 認知症の根本治療が可能となる日がくることを切に願います。
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