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心理室 8月 「心理室をのぞいてみよう(15)」

心理室を覗いてみよう(15) ~心理士の視点について②~

前回はこれまでとガラッと変わり『心理士の視点』について触れてきました。今回は心理士特有の『抱え続けるということ』『考え続けるということ』に焦点を当てながら、もう少し『心理士の視点』について触れさせていただきたいと思います。

結果や効率が求められる現代。『心』というものは時として足枷となります。理想・願望・不安・緊張・落込・怒り等、心から発せられるあらゆるものの影響によって冷静さや的確な判断能力が低下します。妙なこだわりや思い込みに囚われてスムーズに対処出来なくなります。そうすると、結果や効率をUpさせるために『心』を排除することが増えてきます。『心』は自分自身であり、自分の本音・真実・起源です。にもかかわらず、『心』を排除せざるを得ない状況が増えてきます。そして自分だけではなく、都合の良いように他者の『心』をも排除してしまうような事態が増えてきます。

では、『心』を排除するとどうなるのか。自分自身のことも他者のことも理解しているようなつもりで、実際は何も正しく理解できないという仮初の世界が広がることになります。そのような世界では、何をやっても虚しい、何かしていないと退屈で落ち着かない、何だかやけに疲れる・イライラする、何故か人間関係が上手くいかない、人といるのに孤独を感じる等の漠然とした感覚が湧いてきます。つまり、表面的・形式的にはそれなりに現実の波を乗りこなしているようで、どこか生きた自分、生きた他者、生きた関係を得ることが出来ずに不全感を抱き続けることに繋がっていきます。そして最悪の場合、身体的・精神的に調子を崩すことになります。刹那的・独善的な判断で失敗することが増えてきます。即物的な満足に依存してしまうことが増えてきます。勿論、『心』を排除していれば、どうしてこのような望まない事態に陥っているのか理解する術はありません。

そこで『抱え続けるということ』『考え続けるということ』が大切になります。心理士の最大の役割・使命は『心』を出来る限り正しく理解しようとすることです。『心』について『抱え続けるということ』『考え続けるということ』を介して、排除されている『心』を取戻すお手伝いをすることです。排除されている『心』を取り戻すことは容易ではありません。当人にとって都合が悪いものとして排除されていたわけですから抵抗が生じます。素直になれずに裏腹の言動を取ったり、避け続けようとしたりします。当然こちらも苛立ちや絶望といったネガティブな感覚に囚われてきます。しかしそれでも『抱え続けるということ』『考え続けるということ』が大切になります。抱えられず、考えられずに避けられてきた『心』を取戻すためには、自分と一緒になって抱え続ける、考え続ける他者が必要不可欠です。そうする中でやっと『心』に触れることが出来るのです。生きた自分、生きた他者、生きた関係に触れることが出来るようになるのです。

以上、かなり抽象的ではありますが、『抱え続けるということ』『考え続けるということ』を中心に『心理士の視点』について触れさせてもらいました。要は、自分の心も他者の心も抱えること、考えることを避けていればどこかで歪や皺寄せが生じるということ。その歪や皺寄せを緩和・解消するためには、一緒に抱え続ける、考え続ける存在が不可欠であるということ。その協働作業に関わり続けるところに心理士特有の視点があるということです。次回は、イメージアップのために実例を挙げながら『抱え続けるということ』『考え続けるということ』について触れていければと思います。それでは、また次回お会いしましょう。