お知らせ・活動内容

5月 心理室からのお知らせ

心理室を覗いてみよう(13) ~認知機能検査(知)について⑦~

 

前回は『記憶機能』の概要についてお話させていただきました。具体的には、≪記憶プロセスから見た記憶の分類≫≪保持時間や用途から見た記憶の分類≫を示しながら説明をさせていただきました。今回は『記憶機能』のイメージアップを目指して、≪記憶プロセスから見た記憶の分類≫の視点から事例を介してお話し出来たらと思います。

 

≪物忘れで来院したAさんの事例≫

65歳男性のAさん。最近テレビで認知症の番組を見て以来、自分も認知症ではないかと心配に

なり当院に受診されました。「物忘れが気になる」とのことでしたので、具体的に症状を尋ねて

いくと「テレビを見ていても芸能人の名前がすぐにパッと出て来ない」「顔はわかるんだけど、名前が出て来ないんだよね」「あとは物の名前もパッと出て来ないこともある」「喉まで出てきているのに婆さん(奥さん)に“あれだよ、あれ!”としか言えなくて馬鹿にされている」とのことでした。

如何でしょう。皆さんも1度は体験したことがあるのではないでしょうか?すぐに人名や物の名前が出て来ずに“あれだよ、あれ!”と口にしたことが。ここで生じている『記憶機能』の問題は何でしょうか。これは記憶プロセスの「想起(検索)」の問題に該当します。本来であれば、既知のこととして脳内に「記銘(符号化)」「保持(貯蔵)」されているはずの記憶情報が上手く引き出せない事態が生じています。イメージとしては、立て付けの悪い引き出し状態ですね。『記憶機能』は覚えるだけではなくて、必要な時に呼び起こすまでを含めて『記憶機能』なんです。

ちなみに、このAさんの症状は「想起(検索)」の躓き程度でした。しかも、更に話を伺っていると、最近韓流ドラマにハマってしまい夜通し見続けて寝不足であったこと、人名や物の名前は直ぐに出て来なくても少し時間が経てば出てくること等が明らかになりました。ということで、Aさんは認知症ではなく寝不足や加齢の影響と診断され、念のための検査(血液検査・MRI等)も無事パスして安心した様子で帰宅されました。

今回はここまで。如何でしょうか。『記憶機能』の科学的理解が進んだでしょうか。それとも面倒になってしまいましたでしょうか。少なくとも、改めて事例を挙げてみると何気ない日常生活の中に『記憶機能』が隠れていることはおわかりいただけると思います。次回は≪保持時間や用途から見た記憶の分類≫の視点から事例を介して、『記憶機能』の更なるイメージアップを目指せたらと思います。それでは、また次回お会いしましょう。